体験レポート(名古屋から)

私たちの日常の経験は、演劇である。「マラー/サド」プロジェクトに参加して感じた事だ。

本当であればイタリアに行って、イタリアの演者とのコラボレーションを体感し、国境を越えて、同じ演劇をする仲間として、新たな絆が出来るかと思っていたが、世界的な感染症の蔓延により行く事は閉ざされてしまった。

演劇は、コミュニケーションの芸術であると学んだ。演劇の舞台を降りても日々の暮らしがあり、そこでどんな経験をするのかが、演劇をする際にとても役に立つ事を知り得た。

周りの皆さんが素晴らしい個性をいかんなく発揮されている姿を見て、自身も何かをしなくてはという気持ちになればなるほど、自分を見失いそうになった。しかし、仲間と同じ目標に向かって突き進んでいく過程の中で、支えてもらえて、まだ道半ばであるが私は私らしくあって良いのだと思えるようになってきた。

コロナ禍が落ち着いたら、また演劇が好きな仲間と集まり、演じる事を楽しめる日が来る事を心から祈っている。その頃には、私らしく日常を楽しんでいる自分に出会えている事を期待しながら待ちます。

東京ソテリアの皆様には、演劇との出会いを作っていただき、感謝しております。

今畠 美保


「マラー/サド」公演を初めて見た時、演者の魂のこもった歌声に圧倒された。

私は、日本の精神医療の在り方に疑問を感じ、現在仲間と共に地域で活動している。

自分たちは奴隷じゃない、自由を訴えるこの姿を、多くの人達にみてもらいたい。そう願っていた時に、今回のプロジェクトの話があり、仲間の一人がキャストとして選ばれ、サポート役として関わることとなった。「マラー/サド」を創り上げること、先の見えないコロナ禍での練習は、大変な状況であったが、誰にとっても貴重な経験となり得たのではないかと考える。「マラー/サド」や今回のプロジェクトに触発され、自分の置かれた環境を再考したり、自分の欲望や希望に気づいたり、声を上げたりと多くの人達の感情がうごめくことは、このプロジェクトの一つの成功ではないかと考える。

貴重な機会を頂きありがとうございました。

一般社団法人しん 中山 ちはる



オーディションに受かった時、まさか自分が合格するとは思っていなかったので、とてもビックリした。そのあと合宿の稽古が始まり、オーディションに受かったということは、責任をもってやらなければ、みんなに迷惑がかかるなと思い、歌を覚える事で精一杯になった。途中楽しいこともあったけど、新型コロナウイルスの影響もあって稽古ができなかったり、イタリアへ行けなかったりした。その中で学んだことは集団生活というもの、集団で行動をとるということ、とても難しいなと感じた。自分のやりたい事だけをやっていればいい場合はとても楽だけど、集団の場合は他人への配慮が必要になる。今は、マラーサドプロジェクトの途中だが、きっと成功させてみんなで良い笑顔でいたいと思う。参加できてとても良かった。

山崎 裕


 

俳優 山崎 裕

コミュニティカフェ かかぽ 所属。20代の頃から演劇を始め、TV、映画、CMと映像中心に活躍。芸能プロダクションの代表も務める。多忙の中で体調を崩し志半ばにて仕事を断念。その後しばらくの休養を経て、デイケアにて寸劇を6年間行い、主役も3作品行った経験がある。今回オーディションに合格し出演に至る。

出演 今畠 美保

学生時代、演劇に参加した事があり、「チャンスがあれば演劇をやってみたい」という気持ちをもちながら過ごす。幼稚園の先生、保育士での経験を活かし、高齢者福祉の仕事に従事する。その中で、相手に喜んでもらえるパフォーマンスを意識して実践を重ね、今回の出演に至る。

演出家 加藤 智宏

名古屋市出身。1962年生まれ。20代、MOVEという演劇ユニットを始める。1989年世界デザイン博覧会のユニーパビリオンにパフォーマーとして参加。1990年に飲食店バー・パーキーパットを開店し演劇活動を休止。2005年、KUDAN project 『百人芝居 真夜中の弥次さん喜多さん』 をきっかけに演劇活動を再開。主に県外劇団の名古屋制作を担う。2011年に一回だけのつもりで立ち上げた perky pat presents 『ロストゲーム』 (作:北村想) をきっかけに演出活動に入る。2014年~2019年、吹上 『新世界』 スタヂオ開設。2016年からは円頓寺 Les Piliers (えんどうじレピリエ) を拠点として創作活動を行い、表現の場を提供している。
また、俳優を対象とした、朗読 (ROHDOKU camp) や落語 (ナゴヤはいゆう寄席) を企画開催。その傍ら心理学講師を大学にて務める。
〔感想〕作品の中にある数場面を取り出して演出し、なおかつそれを映像にするという、なんとも多層構造を持つものに携われて貴重な経験になりました。どんな仕上がりになるのか楽しみです。

映像作家 田中 博之

映画・TV・PV・CM・舞台映像などさまざまなジャンルの映像を制作。監督した短編映画は国内・海外の多数の映画祭にて上映。NHK教育テレビ「中学生日記」の脚本執筆。愛知県芸術劇場・とよはし芸術劇場PLATの主催事業や少年王者舘の舞台映像を多数制作。野田秀樹が監修する東京2020オリンピック文化プログラム「東京キャラバン」に参加。専門学校名古屋ビジュアルアーツにて講師を務める。
〔感想〕出演者の皆さんの集中力・演技力は非常に素晴らしく、正直もっとゆるい撮影現場になるだろうと思っていたこちらの予想は良い意味で裏切られました。事前に精神障害を抱えているなどの情報がなければ全然わからない、というか、演劇やアートの世界にはもっとデリケートな人がたくさんいますので、これからも“普通”に積極的に活動を続けてほしいと思います。そのためには地域社会から失われてしまった“寛容さ”を取り戻す必要があるのかなと感じました。とても豊かな時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。

撮影アシスタント 佐藤 良祐

撮影場所 栄能楽堂

イタリアと日本の合作である「マラー/サド」に日本らしさを伝えたいという思いがあった。そして能舞台の独特な構造や、舞台上の様々な制約、背面に描かれた一本松は、精神科病棟の非日常的で閉鎖的な空間への表現に通じるものを感じ舞台とさせて頂いた。
〔後藤商事 有限会社 栄能楽堂 〒460-0008 名古屋市中区栄5-6-4 栄能楽堂ビル4階〕

衣装

病衣を着用することで、入院患者が演劇を行う劇中劇を表現した。またジャケットやスカーフは、意志の強さを表現するために赤色を使用し、拘束衣は実際に精神科閉鎖病棟にて過去に使用していたものを借用した。実際に拘束衣を着用し演じる中では、虚しさ、怒り、自由への渇望、自分しか信用できない自分だけの世界に陥りそうな感覚に襲われ、拘束衣に纏われた様々な人々の想いと共に自由と革命を訴えた。

小道具作成 コミュニティカフェ かかぽ の皆さん

〔感想〕大きな舞台に参加できたことは、みなさんの笑顔に出会えるという事で、大変ではありましたが、なんとかえっさかほいさか楽しく作らせてもらいやした。

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